シチリアのオーガニック協同組合
ワイナリーと造り手について
ヴァルディベッラは、シチリア島西部パレルモ県の丘陵地帯、カンポレアーレに位置
する協同組合形式のワイナリーである。1998 年に創設され、現在では 10 軒の有機
農家が参画している。前身はナポリ生まれのエノロゴ:ファブリツィオ・トマス、農
化学を学んだパーチナ:ステーファノ・ボルサ、長らく有機ワイン販売会社のコンサ
ルタントを務めるステファン・ギーセンの3名が興したトマス&ギーセンという共
同プロジェクトだった。「地元の生産者を巻きこんで、テロワールを尊重しながら、
栽培から瓶詰まですべての段階をフォローする」というコンセプトで、トスカーナ、
カンパーニア、シチリアでワインを造っていた。当初からムニールを造っており、次
第に規模が大きくなり、トマス&ギーセンのもとを離れ、自分たちで販売まで管理す
るようになる。
ヴァルディベッラと組合名を改め、ワイン事業を拡大していく。さらにブドウ栽培だ
けではなく、オリーブ、アーモンド、シチリアの地品種(ティミリア)の小麦を利用
したパスタをはじめとする製品、トマトや果物など、生産品目は多岐にわたる。また、
マフィア経済への反対運動「アッディオピッツォ:Addiopizzo」への参画も彼らは強
調する。社会正義と倫理的な経済活動の実現を目指すという姿勢は、ヴァルディベッ
ラにとって欠かせない価値観である。それは、シチリアで農作物を生産する上で、バ
イオロジック農法による地元品種の栽培や、加工段階における添加物の使用を極力
控えるという実践と並んで、彼らの活動の根幹をなしている。
畑と栽培について
畑はパレルモ県カンポレアーレ周辺の丘陵地帯に位置しており、全ての栽培はバイ
オロジック農法に準拠して行われている。組合に属する農家は、多様な作物を栽培し
ており、単一作物への依存を避けている。このような多作物栽培は、土壌の健全性や
生態系の多様性を保つだけでなく、土地とのより深い関係性を築くことを目的とし
ていることは言うまでもない。それぞれの畑は、小規模であることが多く、各農家が
独自の判断と責任のもとで畑を管理。ただし、その根底には組合としての共通理念が
存在し、品質と倫理において一貫性が保たれている。
セラーと醸造について
手摘みで収穫されたブドウは天然酵母による自発的な発酵が行われる。醗酵に際し
ては、培養酵母、酵素、補糖などは行われない。容器としては、主にステンレスタン
クとコンクリートタンクが使用。醸造において最も重視されているのは、ブドウ本来
のポテンシャルを損なわないことであり、人的な操作は極力抑えられている。フィル
ター処理や清澄についても最小限にとどめられ、ワインの個性を素直に表現するこ
とが意図されている。